
数ある介護付き有料老人ホームのなかで自分に合った施設を選ぶにはどうしたらよいのか、悩みを抱える方は多いのではないでしょうか。
この記事では、介護付き有料老人ホームを選ぶ際に重要な事前準備のやり方、実際に探すときのポイントについて解説します。
ぜひ参考にしてください。
そもそも介護付き有料老人ホームとは?
介護付き有料老人ホームとは、介護を必要とする65歳以上の方が入居する施設です。「特定施設入居者生活介護」に指定されており、介護スタッフが24時間体制で排泄や入浴の支援を行います。また夜間の安否確認や緊急時の対応なども可能なため「手厚い介護を受けたい」という方に向いた施設です。
介護付き有料老人ホームには「介護専用型」「混合型」「自立型」の3種類があり、それぞれ入居条件は以下のような違いがあります。
- 介護専用型:要介護1以上の認定を受けた方がに限定
- 混合型:要介護認定を受けていない方(自立や要支援認定の方)でも入居可能
- 自立型:入居時点では要支援・要介護の認定を受けていない方(自立の方)が対象
介護付き有料老人ホームの費用相場は初期費用0〜数千万円、月額費用15〜30万円であり、入居一時金の有無や施設の立地、サービス内容によって差があります。
また、民間企業が運営するため、入居者のニーズを満たすことを重視しています。
施設ごとに特色はさまざまで、入居者の暮らしを豊かにするためのレクリエーションやイベントなどに力を入れているところもあります。
健康状態の維持・向上のためのリハビリや機能訓練もあり、特別養護老人ホーム(特養)などの公的施設よりも充実したサービスを受けられる点が特徴です。
介護付き有料老人ホームを選ぶ際の事前準備

介護付き有料老人ホームを選ぶ際には事前準備が欠かせません。まずは施設に希望する条件を整理したうえで、情報を収集しましょう。
事前準備を怠って「空いていたから」などの理由で入居すると、「想定していた以上に費用が高額で支払いが難しい」「介護職員が少なくサービスの質が悪い」など思わぬ事態を招きかねません。
ここでは後悔しない施設選びのために、希望条件の整理の仕方や情報収集の方法について解説します。
介護付き有料老人ホームに希望する条件を整理する

施設選びで最初に行うことは、希望条件の整理です。希望条件を整理することで、自分の状況を客観的に見つめ直すことができます。
希望条件は人によって異なりますが、以下の4つのポイントについて整理するとよいでしょう。それぞれ解説していきます。
毎月捻出できる費用
1つ目は「費用」です。介護付き有料老人ホームでは家賃、管理費、食費などの固定費に加え、介護度に応じた介護サービス費がかかります。それらは毎月必要な費用であり、入居している限り支払い続けなければなりません。
毎月の費用の捻出は年金のみでやりくりするのか、預貯金を切り崩すのか、家族の援助は受けられるのかなど、わかる範囲で拠出可能な金額をまとめておくことが大切です。
立地条件
2つ目は「立地条件」です。まずは施設周辺に役所や駅などの施設があるかを確認しましょう。それらは行政手続きや外出時などに必要なため、施設から遠い場所にあると不便に感じる場合があります。
また、公園や図書館など文化的な生活を送れそうな場所があるか、家族が面会に通いやすい距離かなど、自分が求める優先事項を整理しておくと良いと思います。
介護内容
3つ目は「介護内容」です。介護付き有料老人ホームは介護を必要とする方が入居する施設です。手厚い介護を求めて入居を希望する方も多いでしょう。
そこで、日常生活ではどこまでの介助が必要か、自身の介護度に応じた介助は受けられるか、介護は日中のみか24時間体制なのかなどの項目のチェックをおすすめします。
求める介護内容を整理することで、介護サービスに対するミスマッチを防げると思います。
医療・リハビリ体制
4つ目は「医療・リハビリ体制」です。継続した管理が必要な持病や認知症などの症状があるか、そのうえで医療行為は必要かという点を整理しましょう。介護付き有料老人ホームには看護師の配置が義務づけられていますが、医師の配置義務はないため、可能な医療行為は限られます。
またリハビリ体制については、機能訓練指導員1名の配置義務があります。
機能訓練指導員の資格の明記はなく、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といったリハビリの専門職のほか、柔道整復師やあん摩マッサージ師が勤務する場合もあります。
施設によっては求めるリハビリを受けられない可能性もあるため、専門家によるリハビリは必要かなど希望条件を整理しておくと良いと思います。
介護付き有料老人ホームの情報を収集する

希望条件が整理できたら、次に施設に関する情報を集めましょう。自分に合った施設を選ぶには、複数の施設の比較検討が重要です。
主な情報収集方法として、以下4点をご紹介します。
インターネットで調べる
複数の施設の情報を集めるには、インターネットの利用が便利です。施設のホームページを見れば、居室の間取りやトイレ・浴室などの設備の充実具合がわかります。また、レクリエーションやイベント時の写真が掲載されていれば、施設の雰囲気を感じ取ることもできるでしょう。利用者の評価や口コミも参考になります。
ただし、ホームページに記載された口コミはよい意見ばかりをまとめているケースもあるため、注意が必要です。
資料請求を行う
インターネットで情報収集をして気になる施設が見つかったら、ホームページや電話で資料請求を行いましょう。ホームページ上では公開されていない情報がパンフレットに載っている場合もあります。パンフレットに記載された内容と事前準備で整理した希望条件とを照らし合わせながら確認するとよいでしょう。
見学に行く
希望条件に合致した施設が見つかったら、見学に行きましょう。ホームページやパンフレットでは施設の情報を集められますが、現場の雰囲気を肌で感じるためには見学が有効です。入居者の年齢層や介護状態、スタッフの表情、コミュニケーションのとり方など現場でしかわからないこともあります。
見学時に確認するポイントは、後述する「選び方」の項目で解説します。
そちらも合わせて参考にしてください。
専門家に相談する
見学を通じて気に入った施設があったとしても、本当に入居して大丈夫か不安に思うこともあるでしょう。そこでおすすめしたいのが、専門家への相談です。自分たちだけでは施設のよい面ばかりに目が行きがちで、デメリットにはなかなか気づきにくいものです。主観的になりすぎると、入居後に後悔してしまうケースもあります。
専門家の専門的かつ客観的な意見を聞くことで、後悔のない施設選びができると思います。
介護付き有料老人ホームの選び方

介護付き有料老人ホームを選ぶ際には、事前に調べた施設の情報と照らし合わせながら下記のポイントごとにチェックするとよいでしょう。
また、見学時にはどのような観点から確認することが望ましいのか、合わせて解説します。
介護付き有料老人ホームの選び方①介護体制
介護付き有料老人ホームを選ぶにあたって、施設の介護体制の把握は何よりも重要です。介護付き有料老人ホームは「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設であり、介護職員の配置が義務づけられています。最低配置基準は入居者3名に対して、介護職員または看護職員が1名以上です。
ただし、配置基準は常勤の総数が「3対1」を満たせばよいため、24時間常にそのような体制が整っているというわけではありません。とくに夜間帯はスタッフの数が少なくなる施設が多い傾向にあります。見学の際は勤務する職員の人数や平日・休日、日中・夜間での体制の違いなどを質問しておきましょう。
また、介護付き有料老人ホームには施設の職員が介護サービスを提供する「一般型」のほか、外部の介護事業者が介護サービスを提供する「外部サービス利用型」があります。外部サービス利用型の施設の場合、施設での介護とは別に外部サービスを契約する必要があります。
24時間介護を提供するのが難しい施設もあるため、夜間の介護を必要とする入居者は一般型の選択がおすすめです。
介護付き有料老人ホームの選び方②立地

施設選びには立地も重要です。
家族が電車で通う場合は駅から近い立地、車で通う場合には運転距離が短い場所や広い駐車場がある施設だと面会に行きやすいでしょう。
また、諸手続きを行う役所や図書館などの公的施設が近くにあると重宝します。
さらに、施設生活で体調を崩したり、持病が悪化したりした場合など万一の際に対応してもらえる医療機関が近くにあると安心できます。
近年多発する災害への備えも重要です。2020年7月に起きた熊本県球磨川の氾濫では、特別養護老人ホームの入居者14名の命が犠牲になりました。当該施設は「洪水浸水想定区域」に指定される場所に建設されていました。自分の身を守るためにも、ハザードマップなどが考慮されているか、災害対策はどうなっているのかも合わせて確かめておきましょう。
以上のポイントは見学時にもしっかりと確認することをおすすめします。
介護付き有料老人ホームの選び方③設備環境・居室形態

介護付き有料老人ホームの居室は、すべての部屋が床面積13㎡以上の個室と決められています。
厚生労働省の「有料老人ホーム設置運営標準指導指針について」に基づいて定められており、住宅型有料老人ホームと同じ条件です。
1人部屋が基本ですが、夫婦や兄弟で入居する方のために2人部屋を用意している施設もあります。
居室にはナースコール、トイレ、洗面所、収納などが設置されているケースが多く、中にはキッチンやバルコニーを完備したタイプもあります。希望する方はチェックしておきましょう。
また、入浴設備の確認も大事です。リフトを使って座ったまま入浴できる「中間浴」や、寝たきりの方でも入浴可能な「機械浴」など、入居者の身体に合わせた設備が整っているかどうかも施設を選ぶうえで大切なポイントです。
介護付き有料老人ホームの選び方④費用

介護付き有料老人ホームを選ぶときには費用の確認も重要です。
施設への入居時に必要な費用や月額利用料はどのくらいなのか、相場を把握しておきましょう。
一般的な費用の相場は以下の通りです。
入居一時金 | 月額費用 | 月額費用内訳(例) | |||
---|---|---|---|---|---|
0〜数百万円 | 15〜30万円 | 介護サービス費2万円 | 居住費15万円 | 食費5万円 | その他2万円 |
都市部や設備の充実した施設では数千万円になる場合もあります。
入居一時金は「家賃の前払い」のことで、数年かけて家賃として償却されるケースが一般的です。入居中に払い戻しがあるとはいえ、入居時にはまとまった金額が必要になるため注意しましょう。
また、月額費用も15〜30万円と施設によって差があります。
好立地にある、基準よりも介護職員の数が多い、設備が充実しているなど条件がよいほど費用は高くなります。
また、介護サービス費は介護度が高いほど月々の利用額が増える傾向にあります。
預貯金や年金額などを考慮したうえで、無理のない支払いが可能かシミュレーションしておきましょう。
介護付き有料老人ホームの選び方⑤医療・リハビリ体制

施設を選ぶ際には、医療やリハビリ体制の確認も重要です。
介護付き有料老人ホームでは看護師の配置が義務づけられているため、胃ろうなどの経管栄養の管理や痰の吸引、インシュリン注射などの医療行為が可能です。
しかし医師の配置義務はないため、専門性が必要な治療・処置を行う際や急変時は近隣の医療機関を受診することになります。
またリハビリ体制については、機能訓練指導員1名以上の配置が義務づけられていますが、資格の指定はありません。
理学療法士なら運動療法、あん摩マッサージ師ならマッサージが得意なため、機能訓練指導員がそれぞれどのような特徴を持っているのかについて確認しておくとよいと思います。
医療従事者やリハビリスタッフの配置は施設によってさまざまです。 医療依存度の高い方を受け入れる施設や、リハビリに力を入れる施設もあるため、希望に合わせて選びましょう。
介護付き有料老人ホームの選び方⑥サービス内容

介護付き有料老人ホームのなかには、お花見やクリスマス会など季節を感じられるイベントや趣向を凝らしたレクリエーションなどを行う施設もあります。 イベントは外出や他の入居者と交流する絶好の機会です。
また、レクリエーションを通して身体を動かしたり、頭を使ったりすることで体力や認知機能の維持・改善につながります。 イベントやレクリエーションは単調になりがちな施設での生活に張りを与え、充実した生活を送るための大事な要素です。
施設を選ぶ際には、イベントやレクリエーションの内容や行われる頻度を確認しておきましょう。
介護付き有料老人ホームの選び方⑦入居者・スタッフの雰囲気

施設を選ぶ際には、介護スタッフや入居者の雰囲気も重要です。
手厚い介護を求めて介護付き有料老人ホームへの入居を希望する方も多いでしょう。
介護スタッフは施設に入居してから、トイレ・入浴などの身体介助やレクリエーションなどで関わることの多い人たちです。 スタッフ同士に笑顔や会話がなかったり、関係の悪さを感じるようなことがあれば、他の施設を検討したほうがよいかもしれません。
また、入居者の表情は明るいか、生き生きとした暮らしを送れそうかといった点のチェックも大事です。 見学の際は施設の見た目や設備だけでなく、スタッフや入居者にも目を向けると良いと思います。
介護付き有料老人ホームの選び方⑧食事

食事は栄養を摂取することのみが目的ではありません。 美味しい食事は日常の楽しみの1つでもあります。
一方、「口に合わない」「美味しくない」など食事への不満があると、日々の生活の満足度は下がるでしょう。 そのような事態を避けるためには、施設で提供される食事を確認しておくことが大事です。
また、食事の飲み込みに不安のある方や、入れ歯で硬いものが食べにくい方のために、食事形態を柔軟に対応できることも重要です。 多くの施設で食材を一口大にする、きざみ食にするなど選択が可能です。 食事形態の変更は通常料金に含まれている場合が多いですが、施設によっては追加料金が発生することもあるため確認しておきましょう。
他にも、施設内に厨房が併設されているか、それとも外部委託なのか、合わせて確認しましょう。
厨房併設の場合は「出来立ての食事が食べられる」などのメリットがありますが、設備費や人件費がかかり、食事代が高くなるケースがあります。 外部委託の場合、設備費や人件費などの費用は抑えられるため食事代が安くなる傾向がありますが、「出来立てが食べられない」「味つけや見た目が劣る」などのケースもあるため、注意しましょう。
施設を選ぶ際、入居者が食事に満足できるかどうかは重要な要素の1つです。 見学時に試食が可能な施設もあるため、実際に味わってみるとよいと思います。