
ヒトは本来眠るもの-ストレスを減らすことが快眠の条件
人間は、ストレスがない状態であれば、適切に眠ることができる生物です。体内リズムは多様ですが、24時間、1ヶ月、1年といった天体の周期によって形成されているとされます。つまり、夜になれば眠り、朝になれば目覚めるのが本来の生物のリズムです。疲れが溜まったり、病気で体が弱った場合、睡眠を通じて回復するようになっています。睡眠を改善するには睡眠習慣と寝具の改善が必要
現実世界には、睡眠を阻害する様々なストレスが存在します。特に現代社会では、夜間活動の増加により睡眠時間が確保しにくくなり、心理的ストレスも増大しています。ストレスの原因には、温度や湿度の変化、騒音や強い光、不快な臭いなどの外的要因、痛みや気道の閉塞などの身体的要因、不安や恐怖などの精神的要因があります。これらの要因が組み合わさり、自然で健全な睡眠を妨げることになります。
睡眠を改善するためには、これらのストレス要因を一つずつ解消していくことが重要です。睡眠薬を使用せずに、人間の睡眠メカニズムに合わせた生活習慣と、ストレスの少ない睡眠環境を整えることが、質の良い睡眠を得るための第一歩です。特に、身体に直接触れる寝具の質の向上は、睡眠の質を高める上で重要です。

ストレスの少ない寝具とは
ストレスを軽減する寝具とは、どのような特徴を持つものでしょうか?主に3つの要素に分類されます。1. 寝床内の快適な温湿度、33℃と50%を実現すること
2. 正しい寝姿勢を保ち、重力による身体へのストレスを緩和すること
3. 官能的な情報が豊かな素材を使用し、精神的ストレスを緩和すること
これらは基本的な要素ですが、実際にはこれらの性能を長期間保つための品質とメンテナンスが求められます。
快適な寝床内温度33℃湿度50%の実現
日本睡眠環境学会によれば、人が快適に眠れるのは、温度が33℃、湿度が50%の環境だとされています。人の深部体温は36~37℃であり、表面温度は約32~33℃ですから、33℃の温度は皮膚の表面温度と均衡していると言えます。寝床内の保温性が不足し熱が逃げると、寒さによるストレスを感じます。入眠時には体温が一時的に上昇するため、冬の寝具は即温性が高いものが望まれます。体温を多く奪う寝具は、なかなか暖まらず入眠を妨げます。入眠後は体温が下がるため、電気毛布のように熱を持続的に供給することは、休息を妨げることになります。
湿度は50%前後が理想ですが、湿度の高い日本ではそのコントロールが難しいです。夏の暑さと寝苦しさは、温度の高さよりも湿度の高さが原因です。そのため、伝統的な日本の家は高床式で、保温よりも湿気を逃がすことに重点を置いています。
最近では、高気密・高断熱の住宅が増え、寝具においても保温性より湿度調節の重要性が高まっています。
正しい寝姿勢の保持と、重力による身体へのストレスの緩和
宇宙空間では重力の影響を受けませんが、地球上では身体に負担をかけない寝具が必要です。掛け布団は軽いほうが体への圧迫が少なく、特に身体を支える敷き寝具(敷き布団やマットレスなど)は睡眠の質に大きく影響します。最も重要なのは背骨で、健康を維持するためには自然な姿勢で眠れる敷き寝具を選ぶことが重要です。
仰向けで寝る際は、背骨のS字カーブを正しい姿勢で支える必要があります。下図に示されたC,D,Eの部分が支えのポイントです。A,Bは枕を指しますが、背骨のC,D,Eを先に調整し、その後で枕を調整しなければ、枕の調整だけでは効果が限定的です。

横向きで寝る際は、側面から見たときに背骨がまっすぐであることが重要です。肩や臀部、つまりC、D、Eのカーブが大きいため、特に突出しているCを適切に支える仕組みが求められます。また、仰向けで寝る場合と比較して、A、Bの枕を高くする必要があります。

敷き寝具は、背骨のS字カーブを自然な姿勢で支え、体重による身体への圧迫を軽減するために適切な体圧分散が必要です。特に横向きで寝る際には、肩や腰の突出部分を適切に支え、圧迫されないようにすることが重要です。
さらに、スムーズな寝返りが可能であることも重要で、これらの要素のバランスを取ることが、睡眠の質にとって非常に重要です。
官能情報の高い素材による精神的ストレスの緩和
これは、単に「心地良い」と感じる素材を使用することを意味します。硬い、または音がするなどの不快な感触を伴う素材は、睡眠を阻害することがあります。天然繊維と合成繊維を比較した場合、天然繊維は身体により近い素材であるため、ストレスが少ないとされています。実際に、絹や高品質な綿、カシミヤなどは触れるだけで快適さを感じさせ、それが睡眠を促進する要因となります。
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マットレス

最初に「マットレス」を選ぶ際は、自分に合った寝心地やサイズを選びましょう。理想のマットレスは体重を均等に分散させるもので、あまりに硬すぎたり柔らかすぎたりすると、体の一部に過度な負担がかかり、血行不良や腰痛を引き起こす可能性があります。マットレスには、ボンネルコイル、ポケットコイル、ノンコイルの三つのタイプがあります。
ボンネルコイルマットレスは弾力があり、体が沈み込みにくいのが特徴ですが、コイルが連結されているために揺れやすいというデメリットがあります。ポケットコイルマットレスは体重の分散に優れ、快適な寝心地を提供しますが、通気性やコストパフォーマンスではボンネルコイルマットレスに劣る場合があります。
ノンコイルマットレスはコイルを使用せず、ウレタンを採用しており、寝心地、通気性、耐久性の面でコイルマットレスよりも優れているとされています。
かけ布団

選ぶ際には、かけ布団の吸湿性や保温力、重さ、体へのフィット感を基準にしましょう。睡眠中にはコップ一杯分の汗をかくとされており、その汗を吸い取り外に放出する能力が快適な睡眠の鍵です。吸湿性や放湿性が高いか、保温力があり体温を一定に保つことができるかもチェックが必要です。
かけ布団が重すぎると寝返りが打ちにくくなり、肩などの一部に過度な負担がかかるため、軽量なものが推奨されます。重さだけでなく、体にしっかりフィットするかも大切です。かけ布団が体にぴったり合うよう、実際に店頭で試すことをお勧めします。
枕

枕を選ぶ際は、高さ、サイズ、硬さの三つの要素を考慮しましょう。理想的な高さは、横になった時に首の骨が背骨と一直線になることです。自分の体に合わせて、高すぎず低すぎない高さを選びます。
サイズには小、中、大の三つがあります。大きいサイズは包まれ感があり寝返りが打ちやすいですが、特に好みがなければ選択肢が多い中サイズが良いでしょう。小さいサイズも選択肢の一つです。硬さは柔らかいものから硬いものまで幅広く、自分が快適に眠れる硬さを選ぶことが大切です。
寝具だけでなく睡眠環境も重要
良質な睡眠を得るためには、寝具の選択だけではなく、睡眠環境の整備も大切です。室温

寝室の室温は季節に関わらず20℃前後が理想で、湿度は40%から60%を保つことが望ましいです。また、寝具の内部温度は30℃を維持することが重要です。このため、夏はエアコン、冬はヒーターを使用し、必要に応じて加湿器や除湿機を使うことが大切です。特に極端な暑さや寒さの時期は、寝る前に寝室を適温に調整しておくことが重要です。
明るさ

寝室の照明は自然な眠りを促すために500ルクス以下が推奨されています。やや明るい部屋で、青白い色よりも赤みがかった暖色系のオレンジ色が好ましいです。
就寝の1〜2時間前には照明を落とし、就寝時には部屋を完全に暗くするのが理想的です。しかし、真っ暗な環境が怖いと感じる場合は、小さな電球をつけても構いません。何よりも自分が安心して眠れる環境を優先し、睡眠環境を整えましょう。
音

理想的な睡眠環境は40dBA以下の音量です。これを超えると、質の良い睡眠が得られなくなる可能性があります。静かな環境を作ることが望ましいですが、賃貸住宅や道路沿いの住宅にお住まいで騒音が避けられない場合は、防音シートを寝室に設置して、睡眠に影響を与えない環境を整えましょう。
また、寝る前にテレビやラジオを聞くと、覚醒を促してしまい、良い睡眠が得られなくなることがあります。寝る前は音の出る機器の使用を避け、読書やストレッチなど静かな活動をすることをお勧めします。
マネして欲しい!就寝三時間前のルーティン
寝具と睡眠環境を整えた後は、寝る前のルーティンを確立しましょう!就寝三時間前

就寝の3時間前には食事を済ませることが大切です。寝る直前に飲食をしてしまうと、胃が消化活動を続けるため、内臓が休まずに浅い睡眠になりがちです。もし仕事が遅くなって就寝3時間前に食事を終えることができない場合は、消化に良いうどんやおかゆを選ぶと良いでしょう。寝る前には揚げ物や刺激の強い食べ物を避けるようにしましょう。
就寝二時間前

就寝の二時間前にはお風呂に入ることをお勧めします。適温は38℃のぬるめのお湯で、5分から15分程度浸かるのが最適です。熱すぎるお湯は体を覚醒させてしまい、リラックスするどころか興奮状態になり、睡眠の質を低下させます。入浴後二時間で体温が徐々に下がり、就寝時には理想的な体温になるため、スムーズに眠りにつくことができます。
就寝一時間前

就寝の一時間前にはスマートフォンの使用を控え、心と体をリラックスさせる時間にしましょう。リラックス効果のある音楽を聴いたり、ストレッチで体をほぐしたり、温かい飲み物を飲むことで、睡眠を促進します。おすすめの温かい飲み物は白湯、生姜湯、カフェインレスの緑茶などです。